呼吸法がもたらすウェルビーイングの向上
私たちが毎日欠かさず行っている呼吸は当たり前のことと思われがちです。
人はこの世に生まれた時から空気を吸って吐き、この世を去る時にそれを終えます。呼吸は私たちにエネルギーをもたらします。人体は呼吸によって酸素を細胞に送り込み、細胞の機能を最適に保ち、老廃物の排出を助けています。
呼吸が根本的に重要なものであることは誰もが知っていますが、同時に、それを軽視しているとも言えます。あなたはどれくらいの頻度で自分が呼吸していることを認識していますか。また、どのようにして呼吸しているかを考えたことはありますか。おそらく、あまりないでしょう。
様々な呼吸法の健康効果
意外なことに、正しい方法で呼吸をしていないために呼吸の効果を最大限に発揮できていない人はたくさんいます。生命が維持できているのだから、呼吸は機能していることは確かなのに、おかしいと思われるでしょうか。単に生存するための呼吸以外にも、様々な種類の呼吸法があり、それぞれが健康にメリットをもたらします。
健康増進、ストレス軽減、リラクゼーション
研究によると、深呼吸は気分やストレスを効果的に改善できることが示されています。これは自己申告による評価と、心拍数や唾液中のコルチゾール濃度などの客観的な評価の両方で確認されました。1
ストレスのかかる状況から離れる機会は重要です。時にはゆっくりと、生活のペースを落としてみましょう。感情は体に直接影響を及ぼします。例えば、嬉しい時には口角が上がり、笑顔になります。同じように、落ち着いているときは呼吸がゆっくりと深くなり、緊張したり不安になったりすると呼吸が早くなったり浅くなったりします。
様々な呼吸法
肺には大きく分けて3つの部分があります。通常、私たちは上葉(一番上の部分)を使った浅い呼吸しかしておらず、残りの部分の容量をあまり使っていません。様々な呼吸法を試してみると、酸素を胸から腹部へと導くことができます。呼吸がうまくできていないことに自分ではなかなか気づきにくいものです。息切れする、息が止まる、急に大きく息をしたくな
る、といったような症状があれば、呼吸が最大限に働いていない可能性があります。そのために酸素が十分に供給されない状態が続くと、心身の健康に影響しかねません。酸素の安定供給は体にも心にも必要なのです。実は、慢性的な呼吸障害に悩む人には、不安や抑うつが多いという研究結果もあります。2
主な呼吸法を試してみましょう
呼吸法によっては、すぐに効果が感じられるものもあれば、時間をかけて練習することで効果が出てくるものもあります。
深呼吸・横隔膜呼吸
お腹まで使って、より大きなエネルギーになる呼吸の方法を学びましょう。
- 仰向けになって枕を使うか、椅子に腰掛けて肩、頭、首を背もたれで支えて楽な姿勢をとります
- ゆっくりと鼻から息を吸って、お腹まで空気を満たしていきます
- 吸った時の2倍の時間をかけて、鼻から息を吐きます
- 片手を胸に、もう一方の手をお腹の上に置きます
- 息を吸うときにお腹が上がり、吐くときにお腹が下がる感触を確かめて下さい
- さらに数回、お腹に息を入れることを忘れずに、深い呼吸を繰り返します
細く長く息を吐く呼吸
横隔膜を動かして体内に入る酸素を増やす呼吸なので、肺の健康が気になる方に有効です
- 鼻から普通に息を吸います
- 唇をすぼめて口から息を吐きます
- 息を吸った時の2倍の時間をかけて息を吐いて下さい
マインドフル・ブリージング
マインドフルネスを取り入れた呼吸にも様々な方法がありますが、その一例をご紹介します。呼吸に集中することで、瞑想のような効果を得ることができます。
- 気が散らない静かな場所を見つけて下さい
- 座るか横になって、楽な姿勢をとります
- 呼吸に集中して、息を吸ったり吐いたりする間の体の様子を感じとり、音に耳を傾けます
- 集中力を維持しつつ、どんな考えが浮かんでも気にしたり判断したりせずに、心の中を通り抜けていくようにしましょう
4-7-8呼吸法
この呼吸法は、眠る前に慌ただしい心を落ち着かせるのに適しています。
- 舌先を口内の上側に軽く当てて、リラックスして口から息をしっかりと吐き出します
- 鼻から息を吸いながら4つ数えます
- 息を止めて7つ数えます
- 口を開いて大きく息を吐きながら8つ数えます
呼吸は、心と体をひとつにしてより良く機能させ、ストレスを解消し、リラックスしてネガティブな感情をコントロールできるようにしてくれます。呼吸はまた、魂を整える強力なツールにもなります。息吹は生命そのもの、なのです。