過食:食べ過ぎを防ぐには
人類は太古の昔から飢えと戦ってきました。しかし今日、多くの人にとっては食べ過ぎないようにするのが難しいくらいです。過食が健康に与える悪影響について知るだけでは不十分です。ここでは世界中の専門家から集めた、食べ過ぎを防ぐためのアドバイスをご紹介します。
1. 食器を変えてみましょう
お皿のサイズを小さくすると食事量の制限に何らかの効果があるようです。小さいお皿を使うと食べる量が少なくなり、それにも関わらず満腹感も得られるという研究結果があります(コーネル大学のブライアン・ワンシンクらによる食と心理に関する研究)。ディナープレートのサイズは次第に大きくなっているようで、1960年代に直径約23cmだったのが現在では約28cmになっています。小さいお皿に変えれば何か違いが表れるかもしれません。
この研究ではサイズだけでなく色についても調べました。1 自分で料理を取り分けるとき、お皿の色が料理の色と対照的なほど、取る量が少なくなるということです。一番効果があるのは赤い皿のようです。もちろんトマトソースのパスタや赤い食べ物の時は除きます。
また、タイの保健省では底に作られた500個の小さなくぼみが余分な油を吸い取るお皿「AbsorbPlate」を開発しているそうです。
2.「引き金」となる食べ物を特定しましょう
人によってはストレスや怒りを感じた時や暇な時につい食べ過ぎてしまう特定の食べ物があります。しかし専門家の意見は、ただ禁止するだけでは効き目がないということで一致しています。24時間営業のスーパーもあり、その気になればいつでも手に入ってしまうからです。
過食についての著書があるソフィー&オードリー・ボスは、食べ過ぎのきっかけとなる食品を敢えて積極的に買いだめすることを勧めています。好きな時に好きな量を食べて良いが、その食べ物を主食としてゆっくりと味わって食べるようにとのことです。そうすることでその食べ物の魅力が薄れ、それに対する自分の感じ方も変わる、というのが彼らの理論です。
一方、ブライアン・ワンシンクを含むその他の専門家は、そういった食品はすぐに手の届かないところや見えないところに置くほうがよいと考えています。オフィスワーカーを対象にした調査で、チョコレートが自分のデスクの上にある場合、2メートル離れたところにある場合と比べ50%近く多い分量のチョコを食べたということです。デスクの引き出しの中という近いけれども目に見えない場所に置くと、食べた量は25%減りました。
唯一の問題点は、調査の対象者が食べた量が減ったこと自体は認識した通りだったのに対し、以前と比べてどれだけ減ったかについては過大評価していたことです。つまり実際に口にしたチョコは思ったよりも多かったのです。ですから期待したほどの減量はできなかったでしょう。
3. 1日の食事スケジュールを守りましょう
一部の専門家は1日3回決まった時間にバランスの取れた食事をし、間食しないのが食べる量を管理するのにベストだと考えます。誰もが規則正しい食事時間を守っていて、現在のようにスナックフードが豊富になかった頃には、肥満者の割合が低かったからです。食事の度にゆっくりとエネルギーを供給する食品を含めるようにすれば、甘い物や塩辛い物を食べたくなる衝動も抑えられるかも知れません。
一方、1日を通じた食事の総量が最も重要だと考える専門家もいます。少なめの食事を1日6回、時間を等間隔にあけて食べることで過食を防げることがあるのです。血糖値が下がり過ぎる前に次の食事時間が来るので間食しなくて済む、というわけです。この方法では6食すべてを栄養価の高いものにすることが鍵です。ただし1回の食事を半量にしないと1日3食の場合の2倍食べてしまうというリスクがあります。
3つめは、100歳まで生きる人の多い沖縄で人々が行っている、お腹が空いたら食べ、満腹に近づいてきたら止める、という方法です。食事を残すことはよくない(そして全部食べたらご褒美にデザートがもらえる)と教えられて育った人は戸惑うかも知れません。
4. 加工食品について考えましょう
栄養士の中には加工食品の人気と手に入りやすさが過食につながっていると考える人もいます。脳は食べ物や飲み物のカロリーの高さを判断できないため、十分なカロリーを摂ったところで食べるのを止める信号を出すことはできません。フードライターのマイケル・ポーランは「食べるべきものをほどほどに食べること。植物を主体にしましょう」と説いています。2
しかし、シェイクやスナックを食事と置き換える体重管理プログラムでうまくいく人もたくさんいます。こうしたプログラムはきちんと続ければ、バランスよく栄養を取り、摂取カロリーを管理できるようになっています。
5. 楽しく食べましょう
ブルーゾーン(ダン・ビュートナーによる調査で広く知られるようになった健康で長寿な人々が多い地域の総称)で共通しているのは、人と一緒に食事をする人は長生きであるということです。3 そして親と一緒に食事をするのが週2回未満の子どもは、そうでない子どもよりずっと肥満になりやすいということも分かっています。
多くの専門家が食べ物について真剣に考えることを強く勧めています。それをマインドフルネスと呼ぶ人もいれば、原点に立ち返り敬意をもって食と向き合うことを説く人もいます。要は、どれだけ空腹なのかよく考え、それに応じた食事をするということです。そしてテレビや携帯電話やパソコンなどに気を取られず、一口一口を味わうことに集中して下さい。そうすることで、満腹、あるいはそれに近づいていることに気づき、食べ過ぎを防げます。
最後に
以上、たくさんのアドバイスを紹介しました。中には相反するものもありましたが、自分にとって有効な方法が見つかるまでいろいろ試してみて下さい。