更年期と周閉経期
更年期が話題になるとき、実際には周閉経期のことを指していることがよくあります。閉経とは、月経周期が止まり、生理がなくなって、妊娠しない体になることです。閉経が確認されるまでのプロセスには何年もかかることがあり、それが周閉経期と呼ばれています。
知らないうちに周閉経期に入っているかも
更年期の主な指標は、当然のことながら、生理が止まることです。更年期は一夜にして起こるものではなく、個人差があります。たいていは生理周期の変化によって徐々に衰えを感じるようになります。生理が遅くなったり早くなったりと不規則になることもあれば、全く来なくなったり、止まったと思っていたら数ヶ月後に戻って来たりもします。また、生理がいつもより軽くなる人もいれば、逆に重くなる人、頻度が増える人もいます。いずれもホルモン量の変動によるもので、完全に止まるまで、従来と違う生理が数ヶ月から数年に渡って起こることがあります。このような変化は緩やかであったり、不規則であったりするため、更年期の初期段階に入っていても気づかないことは少なくありません。
周閉経期の身体的・精神的症状に対処する
幸運なことに、更年期症状をほとんど感じない人や、症状はあっても対処しやすい人がいます。一方では、もっと辛い思いをする人もいます。生理的な健康のためにできる限りのことをしたいなら、まずは何が起こるのかを知っておく必要があります。
よく知られている更年期障害には、生理不順、ほてり、のぼせ、寝汗、腹部膨満感、不安感や全般的な気分の低下などがあります。
気分の変動
ホルモンの変化により、気分の落ち込みや悲しみ、不安、抑うつ感が生じます。普段よりもイライラしたり、心配になったり、塞ぎ込んだり、涙もろくなったりすることもあるでしょう。感情面を支えるには、体内のセロトニン濃度を高める必要があります。自然に増やす工夫をしましょう。
ビタミンDがセロトニンの生成を制御することは研究で明らかになっています1 。ですから、短時間でも安全に日光を浴びて、体内でビタミンDを作りましょう。また、シリアルやオレンジジュースなど、ビタミンDが強化された食品を食べて摂取量を増やすこともできます。同じ研究で、オメガ3脂肪酸が気分の落ち込みに役立つことも分かっています。サバやサーモンなど、脂ののった魚や、チーズ、卵黄などを食べてオメガ3脂肪酸を増やしましょう。
手助けをしてくれる人は必ずいます。自分の症状が手に負えないと感じたら、それを誰かに伝えることが大切です。友人や家族に相談するか、サポートグループに参加してみましょう。それでも対処しきれない場合は、恥ずかしがらずに医療機関に相談して下さい。あなたの症状は決して珍しいものではなく、また、真剣に受け止めるべきです。
むくみ、膨満感
ホルモンは様々な症状に関わっています。量が変動することで、精神的にも身体的にも影響が出てきます。更年期の頃によく見られるのは水分の滞留です。足首や手足が腫れたり膨らんだりするのもそのせいです。また、しばしばガスによる膨満感も伴います。こういった症状は、健康的な食生活を送ることで改善されます。塩分や炭酸ジュースは膨満感の元になるので、控えるようにしましょう。それから、体内に空気が入りすぎるのを防ぐために、ゆっくりと時間をかけてよく噛んで食べるようにして下さい。また、小食にすると消化器系にかかる負担を軽くできます。
ほてり、のぼせ
体温を調節する機能はホルモンの変化に左右されることがあります。ほてりやのぼせが起こるのはそのためです。症状は昼夜を問わず、何の前触れもなく起こることが多いのですが、何かがきっかけになる場合もあります。2 辛い食べ物やカフェイン、アルコールを控えるのはもちろん、厚着や暖房の効きすぎなど、自然と体が熱くなるようなことを避けるのも効果的です。喫煙者なら禁煙が望まれます。
ほてりを抑えるには、暖房器具のそばなど部屋の中でも特に暖かい場所ではなく、新鮮な空気を入れやすい窓際に座るとよいでしょう。ゆったりとした服を選び、重ね着で調整できるようにする、寝具は厚手の掛け布団よりシーツや毛布で層を作る、といった工夫も有効です。ほてりが出そうになった時には、冷たい水で顔を洗う、冷たいおしぼりを首の後ろに当てる、冷たい飲み物を飲む、氷を口に含む、といった対処ができます。
周閉経期が終わるとき
いつまで経っても終わらないように感じるかもしれませんが、終わりは必ずきます。この変化の時はまさに移行期なのです。永遠に続くわけではありません。日を追うごとに完全な閉経に近づいていきます。とはいえ、閉経まで何年もかかるため、兆候を見逃してしまうのも無理はありません。最大のサインは、思春期と同様、生理です。本当の意味で閉経完了と言えるのは、最後の生理から1年が経過した時です。この時点で終わりになります。
男性の更年期について
基本的に更年期とは性ホルモンの減少によって起こるもので、女性の場合は生理が遅くなることが明らかな指標となりますが、男性には特に顕著な現象がありません。それでも、男性も年齢を重ねるごとに性ホルモンが減少し、「男性更年期」と呼ばれる状態になることがあります。主な症状は以下のようなものです。
- 性欲の減退
- 気分の変動、苛立ち
- 筋肉量の減少、運動能力の低下
- 疲れやすい、よく眠れない
- 集中力の低下
- 全般的にエネルギー不足
- 体脂肪の再配分で、お腹周りが大きくなったり、乳房組織の周りに脂肪がつきやすくなったりする
男性が加齢とともにこのような症状を感じるようになった場合は、男性更年期障害の可能性が考えられます。
更年期以降の生活
更年期を迎えても特に厄介な症状が出ない幸運な人もいれば、日々の生活に支障をきたす人もいます。後者に当てはまる人は、周閉経期を終えて完全な閉経に至ったなら、ホッとするだろうと思われるでしょう。ところがその一方で、思いがけない感情が表面化することもあります。生理は非常に不便なものですが、生活の一部として当たり前の存在になっていたものがなくなることによる精神的な影響は、予想外に大きいかも知れません。自分が次のステージに進むことに納得できるのか、と疑問を感じ始める人もいます。子どもは授かりましたか。望んだ数は得られましたか。長い歳月を振り返ってみたら、もしもう一度どこかの時点に戻れるなら、違う選択をしていたかも知れない、と思うこともあるでしょう。
どのように感じたとしても、あなたは一人ではありません。自分は今、新しいステージに足を踏み入れているのだ、ということを折に触れて思い出して下さい。自分で出産することはできなくなっても、母性的な欲求を満たす方法がなくなるわけではありません。育て慈しむ者として自己表現をする機会は、まだまだたくさんあります。これから先も、サポートや知恵を介した関係を築くことができます。あなたが母親であるかどうかに関わらず、閉経後も母親としての役割を果たすことはできるのです。
また、更年期を過ぎると、状況的な要素も多分にあるかも知れませんが、これまで気づかなかった新たな自信を得られる可能性があります。人は年齢を重ねるごとに、自分の考えていることを口にしやすくなるようです。これが単なる偶然なのか、ホルモンバランスの変化によって自意識が薄れた結果なのかはさておき、やりたいことに「イエス」と言い、やりたくないことに「ノー」と言えるのは、実に開放的なことです。
閉経後に留意すべき健康上の問題はいくつかありますが、思い悩むほどのことではありません。コレステロール値や血圧が上昇し、骨粗しょう症のリスクも高くなりますが、骨を丈夫に保つために、良質な食事と十分なカルシウムの摂取を心がけることで対処できます。同様に、健康的な食事と定期的な運動は、更年期に伴う体重増加を予防できることが研究で示されています。3 予期されることを理解し、健康的なライフスタイルを心がけていれば(年齢を問わずそうするべきですが)それでよいのです。閉経の前と後で全く違う生活をしなければならない訳ではありません。