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メンタルヘルスのヒント

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メンタルヘルスを向上し、うつ病を防ぐためのヒント

エリザベス・ロビンソン このほどケンブリッジ・マーケット・リサーチが実施したライフプラスのメンタルウェルビーイングに関する意識調査の最終報告書のレビューを担当したところ、抗うつ薬について使用頻度や長期的な影響などの懸念があることや、代替となるメンタルヘルス支援を求める声が高まっていることが浮き彫りになっていました。

うつ病について

「うつ病は最も一般的な精神疾患であり、世界的には障害の原因の第2位と考えられています。うつ病にはいくつものタイプがあり、軽度から重度まで程度も様々です。私は、問題の本質を認識するとともに、介入や治療が個々人の特有のニーズに最も適したものであることを確かめるのが重要であると考えています。うつは真剣に受け止めるべきです。本人はもちろん周囲の専門家、家族や友人(必要に応じて)を含めて、どんな助けが得られるかに目を向けて、前に進めるようになってもらいたいと思っています。」

うつ病には様々な治療法があります。重要なのは、長期的にメンタルヘルスのケアするためにも(うつになった場合も)自分でできる対処法はたくさんある、と知っておくことです。

知ること、伝えること、そして助けを求めること

私は40年近くメンタルヘルスに関わる仕事をしてきましたが、うつ病を含む精神的な問題に汚名がついてまわることにいつも悲しい思いをしてきました。しかしながら、メンタルヘルスに対する否定的な見方は徐々に払拭されつつあり、個人がメンタルヘルスの問題をより容易に認識し、誰かに伝えて助けを求めるようになってきていることに感動してもいます。これは大きな一歩ですが、必要とされていることはまだまだたくさんありますので、国としての推進策が望まれるところです。

では、自分がうつになっているかどうかはどうすれば分かるのでしょうか。そして本来の軌道に戻るには、何をすればよいのでしょうか。第一歩としてはまず、自分でメンタルヘルスのチェックを行うことから始めましょう。自分の気分を観察して、悲しみや苛立ちなどを感じているか、気力はどうか、睡眠や食欲の状態はどうかをよく見て下さい。そして「いつもの健康な自分」の状態と比べて、普段の感じ方と同様か、考えて下さい。

本来の自分の姿ではないという確信があり、うつかも知れないと思ったら、うつ病について少し調べて(イギリスなら NHS, Young Minds, メンタルヘルスの慈善団体 MIND, または Royal College of Psychiatristsなどのウェブサイトが有用です)どんな対処法がよいか決めることをお勧めします。大切なのは、うつ病は病気であって心の弱さではないこと、一時的な状態であると認識することです。そして気分を良好にするためにできることはたくさんあると知っておくことです。治療には様々な選択肢がありますし、自分が前に進むために最も適切なのは何か、自分で決めることができます。うつに対処するなら、自分に親切にすることを忘れないで下さい。

治療のオプション

うつ病は非常に一般的です。うつの対処法や影響を最小限にするために自分でできることは広く知られるようになりつつあります。治療の必要性を認識する人が増えていることを考えると、うつ病に対処する治療法がたくさんあることを事前に知っておくと役に立つと言えそうです。

私はしばしば、様々な介入で対処できるという点で、うつ病を2型糖尿病になぞらえています。いずれの場合でも「これひとつで皆解決」という策は期待できません。例えば2型糖尿病では、食べるものを慎重に観察して、いつ、何を食べるかをコントロールすることで症状を管理できる患者さんもいれば、薬が必要な患者さんもいます。さらに、錠剤の内服で対応できる人もいれば、注射をしなければ心身の健康を望めない人もいます。うつ病も全く同じで、セルフヘルプや友人からのサポートを利用した生活改善を自分で行って症状をコントロールできる人もいれば、対人関係療法 (IPT), や 認知行動療法 のような心理療法を用いた軌道修正が必要な人もいます。また、抗うつ薬の服用、あるいは心理療法と薬物療法の組み合わせが必要になる人もいます。人によっては治療が難しく、様々なタイプの薬(気分を安定させる薬や精神病の治療薬など、抗うつ作用のあるもの)を使いこなすなど、より大きな介入を必要とする病状になることもあります。うつ病が治療可能であることはぜひ認識していただきたいことです。患者さんの回復を助けるためには、その人にとって適切なレベルで治療が行われるようにする必要があります。

NHSは対話療法の治療オプションをいくつか提供しています。かかりつけの医師から紹介してもらうこともできますし、直接連絡して助けを求めることもできます。 心理セラピーへのアクセスを改善するサービス(IAPT)を通じて、セルフヘルプやカウンセリングによる支援、前述の対人関係療法、認知行動療法に繋いでもらえます。

心のウェルビーイングを引き出すためのヒント

セルフケア

メンタルヘルスを気遣うことは、身体の健康に気をつけるのと同様に重要です。ポジティブな状態でいるために役に立ちそうなことを以下にいくつか挙げていきます。

もしも自分が充電式のバッテリーだったら

自分をバッテリーに例えて想像してみましょう。あなたは現在どの程度の充電量で動いていますか。満充電でフルに稼働していると感じますか、電力は半分くらいでしょうか、それとも空っぽのまま稼働しているでしょうか。自分の生活の中で何がバッテリーを消耗させているのか、に関心を持ち、よく考えて下さい。バッテリーの消耗度はどのくらいでしょうか。この消耗を抑えるために何か変更できることはありませんか。エネルギーの流出を抑える手助けをしてくれそうな人は身近にいますか。一方、バッテリーの充電になる物事は何ですか。エネルギー量を上げてくれる人は周りにいますか。その人たちと、あるいは自分一人で、バッテリーを最適な充電状態に保てるだけのことを楽しんでいますか。

仕事、家庭、社会生活のバランス

少し時間を作って、生活のそれぞれの側面について考えてみましょう。それぞれにどのくらいの時間を費やしているか、満足度、楽しさ、困難や課題はあるか、など自問して下さい。休息やリラクゼーションを含めて、仕事、家庭、社会で過ごす時間と活動のバランスが取れていると感じられますか。偏りを調整するために、それぞれの側面で何か変えられることはないでしょうか。より良いバランスを保つために、他の人やサポートに助けを求めることはできるでしょうか。

自分と向き合い、長所と短所を知る

あなたは何をしていると気分が高揚しますか。何を楽しいと感じ、どんなことから本当の意味での満足感を得ていますか。仕事や社交、趣味、人間関係の要素のバランスがとれていれば、自分自身についての感じ方、ひいてはメンタルヘルスにおいて、全体的にポジティブと言える状態になります。何が自己価値感や気分をポジティブに導いてくれるかを認識しましょう。それに対する感謝の気持ちをもちつつ、可能ならより多くの時間を割り当てるようにして下さい。逆に、自分に正直になって、生活の中で気になっている部分は何か、どんなことが気分を害するのか、ネガティブな感情につながっているのか、も見極めましょう。何か変えられることはないでしょうか。これに対処できるのは自分だけですか。そうでないなら、助けを求められる人は誰かいませんか。

話題にするのは良いこと

私は長年にわたってたくさんの人にセラピーを提供してきましたが、他人に打ち明け、悩みや不安を共有することの効果を過小評価したことは一度もありません。実際、話すという体験が非常に貴重なものとなり、前進に役立った、というコメントを多数受け取っています。単純なことに聞こえるかも知れませんが、ぜひ誰かに話すことを検討してみて下さい。ストレスや苦しい出来事に対処する際には、世界が変わるほどの違いが生まれ、ポジティブなメンタルヘルスとウェルビーイングにつながります。助けを求める相手は必ずしもプロのセラピストでなくても構いません。思いやりがあり、理解を示してくれる、良き友のサポートには、金にも劣らない重みと価値があります。

Dr. Elizabeth Robinson

「自分に優しく接して下さい。悪いことが起こったら嫌な気分になるのは全く正常です。人はしばしば、自分自身に苦しい時間を与え、自分を弱い存在とみなします。悲しいことに、他人に負担をかけたくないから自分の悩みは話さない、という人も少なくありません。このような理由で悩みを共有したり話したりしないでいると、うつ病などの精神的問題の発症リスクを高めることにつながります。」 signature Dr. Elizabeth Robinson

「問題を共有することは問題を半分にすることである」ということわざが示すように、問題や心配事を共有してくれる人がいることは常に有益です。苦しみを味わったとしても、信頼できる人に対して感情を表現し、共有することは健康的です。これはぜひとも認識しておきたい重要なことです。

食事、運動、アルコール、薬物

自分と向き合うことについては先にも述べましたが、体調を整え、ポジティブな気持ちに導いてくれるものとそうでないものを判断するのも必要です。そして重要な点を繰り返しますが、バッテリーパック全体の中の「ランニングチャージ」がどの程度か把握することです。運動すると快感ホルモンが分泌され、気分が高揚することはよく知られていますが、規則正しい食事に気を配ることも大切です。過度に食事を減らしたり栄養の偏ったものを食べ過ぎたりして、エネルギー水準が不安定になると、うつに影響する可能性があるので気をつけましょう。アルコールや薬物がうつ病をはじめとするメンタルヘルスの問題につながることは明らかです。アルコールに関しては、私は通常、うつ病の管理との関連でアルコールがどのような影響をもたらすのかをクライアント本人に考えてもらいます。お酒の出る場が社会的交流の点から総合的に好ましい方向へ作用することもあれば、飲酒のネガティブな影響の方が大きい場合もあるでしょう。アルコールを禁忌とする薬を服用していないのであれば、症状にどう対処するかは個人で判断して良いと私は思っています。

楽しみや喜びをもたらす活動を

休息、リラクゼーション、喜び、楽しみを得るために何ができるか、積極的に考えることをお勧めします。バッテリーを充電し、幸福感を高め、心身のウェルビーイングを最適化することにつながるなら、何でもやってみましょう。目の前のことで手一杯になって、自分のために時間を作ることを優先できないこともあるでしょう。それでもアンテナを立てて機会を捉え、好ましい活動に時間を割くことで、心のウェルビーイングが大きく変わります。

人間関係を活用する

人の生きる世界はとても社会的です。人は家庭や職場、社交などを通じて多くの人間関係に囲まれています。その関係性には、困難であったり挑戦的であったりするものもあれば、支えになったり、やりがいになったりするものもあります。私がよく使う簡単な例えは、「ラジエーター暖房機と液漏れ」です。そばにいると温もりをもたらしてくれる人、支えてくれる人、バッテリーの充電になる人、自分自身についてより好ましく思えるようになる、そんな存在は誰でしょうか。会うと自分自身を良く思えなくなる、液漏れを引き起こす人はいませんか。あなたの暮らしの中でラジエーターを最大限に活用するにはどうすればよいでしょうか。助けを求めたり、存分に楽しんだり、リラックスできることをしたりと、温もりのある人との関わりを充分に持っているでしょうか。「液漏れ」対策に違った方法を検討してみませんか。

薬剤

メンタルヘルスの管理に自力で最善を尽くしても、薬物療法が必要かつ適切な治療となるタイプのうつ病になっている場合もあります。うつ病と治療に関する情報を調べて、積極的に専門家に助けやアドバイスを求めて下さい。その道のプロがウェブ上に掲載している情報に加え、かかりつけの医師やメンタルヘルスの専門家、薬剤師も窓口になります。薬物療法を検討する際は怖がらずに、どのような薬が必要なのか、どのくらいの期間必要なのか、治療の結果はどうなると予想されるのかなど、気になることを聞いて下さい。投薬は、耐え難い副作用を引き起こすことなく、症状を治療するためのものです。上記のように自分と向き合ってうつの症状を認識し、治療を始めてからの変化に注意していれば、最終的には「いつもの自分」に戻るという目的が達成できるでしょう。それでも心配なことがあれば、いつでもかかりつけ医のもとに戻って聞いて下さい。他のオプションについて質問しても構いません。

エリザベス・ロビンソン博士 は、メンタルヘルスの分野で35年以上に及ぶ経験を有する心理療法士です。最初に精神科の看護師として専門的な訓練を受けた後、ヘルスサイエンス(BSc.Hons)を学び、続いてダーラム大学で博士号を取得しました。当時の研究では、対人関係療法を用いたうつ病の脳機能イメージングに取り組んでいます。

さらに博士は、急性の精神症状の治療や法医学的精神医学、メンタルヘルス研究所の上級研究員として働いてきました。1997年にジュネーブで対人関係療法の初期研修を受けた後、1998年にニューヨークの専門家の監督下で対人関係療法の実習と研究にあたり、研修を修了しました。博士は研究者として活動する傍ら、対人関係心理療法士として多くの臨床試験の主任を務めています。

現在は対人関係療法のトレーニングや講座を全国で多数開催し、精神科医や心理士、看護師、ソーシャルワーカー、作業療法士など、セラピーを行う立場にある人々に継続的な指導をしています。研究面では、統合失調症、うつ病、不安、社会的機能、自殺、性機能障害、対人関係療法、脳イメージングなどを扱う無作為化臨床試験の評価や精神鑑定、治療に携わっています。うつ病、心的外傷、性や人間関係の問題に特に造詣が深い一方、不安や恐怖症への取り組みにおいても経験が豊富で、対人関係療法、性心理カウンセリング、眼球運動の脱感作と再処理法、不安管理、認知行動療法など、多くの心理学的治療モデルを用いています。