妊娠中の運動の重要性
妊娠中の女性は、自分とお腹の赤ちゃんを大切にすることが最優先です。
それを理由に、9ヶ月間は運動を控えようという気持ちになりがちです。でも、運動をやめてしまうのは得策ではなく、いつもより軽めに楽しむのが良いようです。運動がもたらす健康上のメリットは、妊娠前と同様に重要です。さらに、運動は自分だけでなくお腹の赤ちゃんにも良い影響を与えますので、体を動かすことを積極的に考えてみましょう。
体を動かすべき理由とは
イギリスのNHSは妊娠中に体を動かすことの重要性を強調しています。それは、アクティブに体力づくりに励むことで、体型の変化や体重の増加に適応しやすくなるからです。 1 また、定期的な運動は、足首や足、手のむくみ、静脈瘤の発症を抑え、腰痛対策にもなると言われています。 2
妊娠中の運動の安全性
体を動かすこと自体がお腹の赤ちゃんにとって安全でないということはありませんが、避けた方がよい運動はあります。特に、乗馬、スキー、サイクリング、体操など、転倒の危険性が高いものは避けるべきでしょう。また、格闘技やテニス、スカッシュのような球技など、お腹に何かがぶつかる危険性のあるスポーツも避けて下さい。スキューバダイビングは、赤ちゃんの減圧症対策ができないのでお勧めできません。それから、妊娠16週を過ぎたら、長時間仰向けになるのは避けて下さい。心臓に血液を戻す主要な血管が赤ちゃんの重みで圧迫されて、立ちくらみや失神を生じることがあります。ヨガやピラティスはやっても構いませんが、インストラクターに妊娠していることを伝えた上で、不快感やめまいを感じるような体勢をとらないように注意して下さい。
そのほかにも気をつけるべきことはいくつかあります。お腹に赤ちゃんを抱えていると体温が上がりやすくなるので、水か同等の飲み物でしっかりと水分を補給することが大切です。
妊娠中に適している運動とは
妊娠初期から出産予定日に至るまで、妊娠中でも全く問題のないエクササイズはたくさんあります。普段通りの運動を続けても構いませんが、自分の体の声に耳を傾けて、違和感に気付いたら中止して下さい。体型の変化に応じて、より快適に行えるエクササイズや、妊娠中に特有のメリットがあるエクササイズを取り入れていくとよいでしょう。
水泳は体重が増えても水が支えてくれるので、特におすすめです。施設によっては、妊娠中の女性を対象としたマタニティ・クラスを設けているところもあります。水泳に興味のある方は、最寄りのプールに問い合わせてみましょう。
腹筋強化エクササイズでお腹の筋肉を鍛えると、妊娠中によく問題となる腰痛のサポートになります。自宅でできる簡単な運動の一例をご紹介しましょう。四つん這いになって、膝を股関節の真下に、手を肩関節の真下に置きます。背中を丸めるように天井に向けて引き上げながら腹筋を引き締めて下さい。そして、おへそを覗き込むようにしていた頭を前に出しながら、リラックスします。腹筋に力を入れることを意識して、ゆっくりと10回ほど繰り返します。
骨盤底筋エクササイズは、妊娠中に負担が大きくなる骨盤底筋を鍛えるためのものです。骨盤底筋が弱っていると、咳やくしゃみをしたときや、力んだときに失禁してしまいます。恥ずかしくてあまり口に出す人はいませんが、妊娠中も妊娠後も多くの女性が悩んでいることです。骨盤底筋を鍛えるには、トイレを我慢する時のようにお尻の筋肉を締めて、膣を引き上げる動きが有効です。このように力を込めた状態をできるだけ長く保ってから脱力するというエクササイズを10回繰り返します。これを1日に2、3回行って下さい。
注意したいこと
妊娠中の運動は基本的に問題ありませんが、例外もあります。心臓や肺の病気、膣からの持続的な出血、子癇前症や高血圧、貧血、早産、多胎妊娠などの症状がある方は必ず、運動を始める前に医師に相談して下さい。