幸せな人々が習慣にしていること
古来人が求めてやまない、幸せの秘訣とは
幸せは一時的な気分だけを指すのではありません。人は幸せという窓の向こうに人生の展望を見ています。心が幸せな状態にあれば、心身の健康にポジティブな影響がもたらされることが確認されています。1
じっと座ったまま幸せがやってくるのを待っていればよいのなら楽ですが、そう簡単にいかないのが人生です。手に入れるには、積極的に探し求める必要があります。
幸せの鍵は「壮大な冒険」でも大掛かりな生き方の変更でもありません。それはまず理解しておきましょう。朝目を覚ました瞬間に「今日の自分は昨日までと違う」と切り替えられると思うなら、それは愚かなことです。非現実的な目標を設定し、挙げ句落胆で一日を終えることになるでしょう。
幸せな人々が習慣にしていることに着目して、幸せの根源を探ってみませんか。研究によると、自分を幸せだとみなしている人の多くが幸せにつながる習慣を身に付けていて、その習慣が経験と認識の両面において有益に働いていると考えられるそうです。ほんの少しの努力で始められるような行動や日常のちょっとした習慣でも、積み重ねればゆっくりと着実に変わっていくことができます。ここでは、幸せな人々の特徴的な習慣をいくつかご紹介します。
親しい人間関係を培う
当然ながら、幸せの感じ方において友人や家族との親密な人間関係が大きな要因となっていることは、多くの研究で示されています。2
このような関係なくして、力を合わせ、互いに支え合う仲間は得られません。少なくとも、一緒に会ったり、おしゃべりしたり、笑い合ったり、趣味を共有したりする友人や家族がいないと、人生は退屈で面白みのないものになってしまいます。深刻になると、人と接する機会が長期的に欠如し、孤立した結果、健康まで悪影響が及びます。
さしたる努力をせずとも、自然にたくさんの友人を引き寄せることができる人もいれば、友達づくりの最初から困難に直面する人もいます。重要なのは友達を作ることだけではありません。親しくなった人たちとの関係を育てていくことも大切です。
研究によると、友人関係では量より質が勝ることが分かっています。知り合い程度の友達がたくさんいるより、数は少なくとも親友と呼び合える深い関わりがある方が、より満たされた気持ちになるものです。人間関係を育むには、お互いに努力が必要です。お互いに忙しい時でも連絡を取り合ってつながりを保つことで、生涯にわたる幸せの土台を築くことができます。
日々の成果を大切に
幸せな人たちは「小さな勝利」を積み重ねることで毎日を最大限に充実させています。一方、大多数の人は大きな目標やプロジェクトを達成することにこだわるあまり、小さな進歩を認識していません。成果は目立ったものでなくても構いません。自分ができたこと、達成に誇りを持てることなら、小さなことでもよいのです。
長いメールを送信した、棚の修繕をした、部屋の整理整頓を終わらせた、といったような日々の小さな成果は、人生全体を視野に入れようとすると見失いがちです。ですから、それぞれの成果を記録してみましょう。一日一文の簡単な日記でも、ブログのような投稿形式でも、記録を残すことで、振り返った時に自分がどれだけ達成したかがよく分かるようになります。小さくとも勝ち得た何かの一つ一つがリアルで意味のあるものになり、ポジティブな姿勢の大切さも感覚的につかめるでしょう。
時間を無駄なく使う – ただし何をするにしても、楽しむこと
忙しくしていることと、急かされていることとの間には微妙な違いがあります。後者が理想的でないのは確かです。少なくとも、過剰なストレスは心身の健康に悪い影響を及ぼします。また、これと言って忙しいわけではなくても、気持ちばかり空回りして、自分の人生にも他人の人生にも何の価値ももたらしていないと感じることがあるでしょう。
研究によると、幸せな人々は適度なバランスを保って、過労にならない程度にそこそこ忙しくしているようです。それは、自分の人生に明確な目的意識があり、時間を無駄なく使うことに、何かを達成することと同様の価値を見出しているからです。
その日する必要のあることを把握し、必須事項か後でも構わないかを考えて優先順位をつけることを学びましょう。そうすることで、抱え込みすぎて自滅するような事態は防げます。膨大な時間とエネルギーを求められるタスクなのに、やりがいが感じられないときは、客観的に見直すチャンスです。満たされないのはなぜなのか、違うアプローチはできないか、そんな問いかけが思考を活性化することもあります。自分の時間を大切にするためにも再考しましょう。
自己肯定感を高める
当然のことながら、不幸に感じることと自尊心の欠如は密接に関係しています。逆境の中で自信や自己像を揺るがすような出来事に遭遇すると、気持ちが落ち込んでしまうものです。
ショックから立ち直り、自己肯定感を高めるのは簡単ではないかも知れませんが、注力する価値のあることです。自分の幸せは他の誰でもない自分が決めるもの、と自分に言い聞かせることから始めましょう。自分の幸せを外界で起こる出来事や誰かの意見に結びつけて考えている限り、自分の感じ方は自分でコントロールできないものの力に振り回されてしまいます。それが内向的に恥じ入ること、自信をなくしていくことにつながります。
周囲がどうあろうと自分の意思のみで自己像を確立する方法は楽をして学べるものではありませんが、その試みはとても有意義なものです。自分なりの見解や信念に自信を持ち、その価値を認識して下さい。そして先に触れたように、日々自分が達成したことを確かめながら歩んで下さい。あなたが認めた成果は、誰もあなたから奪いとることのできないものなのです。
経験に価値を見出す
世界が実に唯物論的なものであることは否定できません。お金で買える物に価値を置きすぎている人はこの世にありふれた存在です。しかしながら、諺にもあるように、幸せはお金では買えません。
幸せな人は経験を大切にしています。新しいことに積極的に挑戦し、ある程度のリスクを恐れず、そこから学ぶことを心から楽しんでいます。
苦労して稼いだお金の使い道を考えるとき、ピカピカの新しい「もの」ではなく、何か「できること」を探してみて下さい。全く新しい体験(多少常軌を逸するような)でも、久しぶりに友人とディナーに出かけるような単純なことでも構いません。ポイントは、何かを手に入れるよりも、何かを経験する方が幸せな思い出になる可能性がずっと高いという点にあります。
人の心を幸せにするものの多くは、過去の記憶や生涯ポジティブな印象を持ち続けることのできるような経験に由来しています。物理的な「物」にはやがて消耗するか尽きる時がきます。友達とスカイダイビングに挑戦した思い出は、どんな物よりも長持ちするでしょう。
思いやりを行動に
思いやりのある行動は、何よりもすばらしい充実感をもたらします。友人や同僚に優しく接したり、慈善活動や地域社会でのボランティア活動に時間を割いたりして、誰かを思いやる気持ちを行動にすると、自分の心の健康にもポジティブな効果がもたらされます。誰かの力になることをして、相手の心に幸せな気持ちが生まれるのを認識すると、脳内の快楽中枢が活性化されるということは研究でも示されています。それはまた、自分が直面する試練や苦難を別の角度から見るという重要な観点の変化にもつながります。
ちょっとした親切は日常生活の中で簡単に育むことができます。ことの大小を問わず、一日一善を実行してみましょう。気が向いたときに身近な人たちや赤の他人を相手に何か親切なことをする、という方法もあります。やってみれば、自分がどれほど幸せを感じられたかに驚くかも知れません。
感謝の気持ちを育む
感謝していることをリストに書き出すように言われると、大抵の人はすぐに手が止まってしまいますが、これはとても優れた肯定的承認になります。一日の終わりに、その日にあったありがたいことや生活の中で感謝していることを一つだけでも日記やノートに書き出してみましょう。
このささやかな習慣を通じて人生を見直してみると、感謝の対象がいかに多いかに気付くはずです。感謝の気持ちを表現することも忘れずに、日々あなたを助けてくれている人々に言葉で伝えて下さい。感謝されるということが相手にとってどれほど意味のあることか、過小評価してはいけません。3 幸福の心理学に関する研究調査では、暮らしの中で良いことを認識し、感謝している人たちは、ストレスやうつ病の発生率が低く、より幸せで満たされていることが明らかになっています。
今すぐ始めましょう
運が良ければ、どこからともなく突然幸せが降ってくるような日もあります。でも、運不運に頼る必要などあるのでしょうか。どんなことでも、規律と習慣、実践で磨き上げていくことができます。幸せも例外ではありません。新しい習慣をいくつか試したり、古い習慣を見直したりしながら、日常の中で最大限に幸せになれるよう、自分自身の可能性を開いて下さい。