ご存知ですか、指圧と鍼治療
指圧が健康全般に役立つことは、特に東洋で古くから知られています。
近年は西洋でも中国伝来の治療法が受け入れられるようになって、体を通る気の流れに働きかけ、バランスと調和を回復しながら不調や痛みを和らげることのメリットについて理解が深まっています。
指圧とは
指圧は、正しく学べば自分で施術でき、心身に大きなメリットをもたらす可能性のある療法です。指圧の利点のひとつは、正しいツボの位置と基本的なテクニックを理解するだけで、誰でも自分の治療に役立てられることです。
指圧は手を使って経絡の上にあるツボを刺激することで効果を引き出します。具体的な方法は後ほど詳しく説明しますが、体内の気の滞りを解消してスムーズに流れるようにすると、痛みの緩和やリラクゼーション効果が期待できます。
鍼治療も指圧と同じようにツボを刺激して痛みやストレスを和らげますが、髪の毛ほどの細い専門の鍼を体に刺し、経絡の深部を刺激するのが特徴です。
指圧とは異なり、鍼治療は訓練を受けた鍼師が行わなければならないため、通常はクリニックや治療室で施術されます。
鍼治療や指圧に効果はあるか
どこか作り話のように聞こえるかも知れませんが、いずれについても多くの研究が行われ、立証されています。そして、イギリス国民医療サービスなど主だった医療機関で既に治療プログラムの一環として鍼治療と指圧が導入されています。
鍼治療について以下引用「NHSの多くの一般診療所、英国の大半の疼痛クリニックやホスピスで使用されている」 1
国立医療技術評価機構(NICE)は、NHSに対して療法の適用方法や患者のケアに関するガイドラインを提供している。現在NICEは以下の場合に限定して、治療法の選択肢として鍼を検討することを推奨している。
- 慢性(長期)疼痛
- 慢性緊張型頭痛
- 片頭痛
指圧と鍼治療が健康にもたらすメリット
指圧や鍼治療の効果として最も多く報告されているのは、痛みの緩和です。
イギリスの中医・鍼治療団体 The Association of Traditional Chinese Medicine and Acupuncture UK は以下のように説明しています。
「鍼治療は、腰痛やその他の筋骨格系の問題など、様々な痛みを伴う状態に適応しやすい。また、様々な内臓の不調にも使用されている。鍼治療には心を落ち着かせる作用もあり、より前向きで活力ある気分に導くことができる。具体的な症状としては、WHO(世界保健機関)が鍼治療の可能な疾患を41種特定したことは注目に値する。」 2
鍼と指圧を代替補完医療として使用するメリットの大きさに着目する医療機関は、前世紀から次第に増えてきました。
今日では、鍼、指圧ともに、脳卒中や不妊症、アルツハイマー病、不安、ストレス、うつ、さらにはCovid-19やその後遺症などの治療に活用されています。
指圧の作用
中国医学では、人体には気というエネルギーの流れがあり、その流れは全身を網羅する経絡に沿っていると考えられています。そして、経絡に乱れや詰まりが生じると、気の滞りが病気やストレス、不安感として身体的に現れる、とされています。
指圧は、手指で圧力をかけて経絡を刺激することでエネルギーを解放し、内なる流れを回復させ、症状を緩和します。
気の流れが回復すると、身体のバランスが整って、健康で良好な状態に戻ります。
鍼治療の仕組みも同様ですが、指の代わりに鍼(皮膚に刺す)を使って経絡を刺激します。
指圧は自宅でできるか
指圧は自宅で学ぶには理想的なセルフケアです。少し指導を受けて経絡と手技を理解すればできるので、誰でも学び活用することができます。
訓練を受けた鍼師が行う必要がある鍼治療とは異なり、指圧は自宅で日常的に行うことができ、リスクもほとんどありません。
自分で指圧する際のポイント
主なポイントは以下の2つです。
- どのツボを刺激すれば、どのような問題にアプローチできるのかを理解する。
- 手や指を使って、効果的に圧力をかけるテクニックを身につける。
基本を学んだら、自分で施術してみましょう。最初は、手の届きやすい場所にあるツボを中心に行うのがおすすめです。
例えば、ストレスを解消したいのであれば、胸のちょうど真ん中、両乳首の間にある膻中(だんちゅう)を押してみましょう。しっかりと、かつ不快にならない程度の圧力で押したり、マッサージしたりしてツボを刺激して下さい。数秒間押すだけでも十分な刺激になります。
施術する際は静かにくつろげる場所を選び、リラックスした状態で呼吸を整え、体の声に耳を傾けるようにして下さい。
胸を開き、気の流れをスムーズにすることで、ストレスが軽減され、落ち着きを取り戻せるはずです。
指圧はどこで学べるか
指圧について学べるコースやプログラム、クリニックは、オンラインでも対面式でもたくさんあります。伝統的な指圧を体験したい場合は、最寄りの治療院へ行ってみるとよいでしょう。
また、当サイトに最近掲載された関連記事で、段階的に基本を学ぶことができます。
指圧はストレスや不安の解消に役立つか
ストレスや不安を取り除くことは、痛みの緩和に次ぐ、鍼や指圧の最も一般的な使用目的です。さらに重要なことは、患者本人が施術後に最もよく報告している効果がストレスの低下であり、より穏やかでリラックスした気分になれる、ということです。
指圧がストレスや不安、うつの緩和にどれほど効果的であるかを理解するべく、これまでにも多くの研究や調査が行われてきました。患者に対するプラセボ効果に言及したものが多い一方、環境と公衆保健の専門誌(International Journal of Environmental Research and Public Health)に掲載された2021年の研究では、次のように報告されています。
「シフト勤務の看護師に指圧を施術したところ、ストレス、疲労、不安が軽減されたことが報告された。したがって、様々な臨床現場において、看護師に指圧を適用することは必要と言える。本研究は、シフト勤務の看護師のストレス、疲労、不安を軽減するための看護介入方法として、経絡指圧を用いることが適切であることを示した点で意義がある。」
指圧を受けた後、どのくらいで改善が感じられるか
特にリラックスして落ち着いた環境で施術すれば、効果はすぐに感じられるはずです。ツボを押すことでエネルギーの流れが改善されると、すぐに元気を取り戻せます。
臨床的には、指圧はセロトニンの分泌を誘発し、エンドルフィンを増加させます。エンドルフィンは、痛みやストレスに対処するために神経系によって生成される天然の化学物質です。一般に「快感物質」と呼ばれ、気分を高め、より幸せで穏やかな状態に導く働きがあります。 3
指圧治療の頻度
指圧は必要な時に何度でも行うことができます。施術後の効果は、症状や痛みの度合いによって異なります。回復過程の最初のうちは、頻度は少なめに、より集中的な指圧を行う必要があるかも知れません。
自分で指圧のテクニックを習得すれば、必要なときに必要なだけ、しかも追加費用なく行えて便利です。
指圧の効果を高めるために利用できるもの
木製のマッサージャーやローラー、セラピー用のカッサやツボ押し棒など、指圧の効果を高めるための道具はたくさんあります。
ですが、まずは重要なツボを覚え、手や指を使って刺激を加える場所や圧力の強弱を理解することが望まれます。ツボを正確に見つけて指圧の効果を最大限に発揮するためには、感覚的な把握が非常に重要です。
指圧を取り入れてより良いマッサージをしたい場合、マッサージオイルを使用すると、さらに穏やかにリラックスする体験ができるようになります。
指圧のテクニックとコツ
- 時間を確保し、静かに座って施術を始めましょう。
- リラックスして、落ち着いたリズムで呼吸を続けて下さい。
- 親指で圧をかけ、人差し指と中指は補助的に使います。
- 痛くない程度にしっかり押さえます。エネルギーの流れを改善することで痛みを和らげるのが目的です。流れを止めるような圧はかけないで下さい。
練習を重ねればそれだけ、正しいツボと圧力のかけ方が分かり、最大限の効果が引き出せるようになります。
鍼治療と指圧の由来
中国の伝統医学は、何千年も昔から、身心のバランスを回復と安らぎをもたらしてきました。長い時間をかけて進化してきた中医学は、西洋の医療にも、健康全般の手助けをするための代替補完治療法として取り入れられています。
今日、世界中の何千もの治療院やクリニックが、痛みや症状、ストレスを和らげるために指圧や鍼を使用しています。
指圧と鍼は一緒に使えるか
両者を組み合わせた治療は広く行われています。
鍼治療の後、次の予約の日が来るまでの間、自宅でツボ押しをして治療を続けることもできます。
同様に、指圧を取り入れたマッサージはリラックス効果の高い補完的療法として鍼治療と併用が可能です。